ポリッシュに関して、もう少し詳しく紹介をいたします。
乾燥した状態のポリッシュのことを「ドライワックス」と呼びます。乾燥した状態とは、ポリッシュの缶のフタを開けておいて、ポリッシュに含まれる有機溶剤を蒸発させて乾燥させた状態のことを言います。なぜ有機溶剤を蒸発させて乾燥させるかというと、ワックスの配合比率が高まり、ポリッシュを塗布後に乾かす手間が省けるほか、磨き時に摩擦で落ちにくくなるため鏡面が早くなります。 プロの靴磨き職人さんでも、光沢を出すために「ドライワックス」を採用しているケースが多くあります。
乾燥方法ですが。ポリッシュの缶のフタを開けておくだけでいいのですが、有機溶剤が蒸発をしますので、屋外の日陰で風通しがよく、雨に濡れない場所がよいです。
それではどれぐらいの時間をかけて乾燥させればよいのでしょうか。
靴磨き職人さんに聞いてみました。
一日半と答えた職人さんもいます。
三日と答えた職人さんもいます。
一週間と答えた職人さんもいます。
職人さんそれぞれの考え方やポリシーがあると思いますので、どれが正解とは言えません。
もちろん時間が長いほど有機溶剤は蒸発をしますので、ポリッシュはワックス分の塊になります。一週間ぐらいでほぼ全ての有機溶剤は蒸発をします。有機溶剤が蒸発すると、靴クリーム特有の臭い匂いもほとんど抜けます。ビーズワックスの甘い香りがする商品もあります。
下の画像のポリッシュは一週間かけて乾燥をさせたポリッシュです。乾燥前と比べて8割ぐらいに縮まっています。(真ん中が凹んでいるのは使用したからです)
海外製のポリッシュは新品の時点ですでに中身が乾燥し収縮している商品が多いです。よく売れるカラーの「ブラック」と「ニュートラル」ではほとんどないのですが(在庫期間が短いため)、それ以外の売れにくいカラーは製造から販売まで時間がかかるため(在庫期間が長いため)、中身が乾燥し収縮している商品が多いです。商品が当店に入荷した時に缶を振ってみると「コロコロ」と音がします。すでにドライワックスになっています。また乾燥によりひび割れが起こっている場合もあります。これは商品の特性であって不良品ではありません。
ポリッシュを乾燥させてドライワックスにすると、革靴にポリッシュを一気に分厚く塗ることが出来、光沢を出す仕上げが早まります。@伸太郎もドライワックスを採用していますが、これを批判する人もいます。
某メーカーの研究員さんが言われていました。
「我々はポリッシュを均一にきれいに塗りやすいようにと、有機溶剤の配合も考え、きちんとした製品を作っています。ドライワックスなんて靴磨き職人の手抜きですよ」。
@伸太郎は手抜きとは思わないのですが、製造者と使用者では考え方が違いますね。